年間10万人が介護離職|防ぐために使える制度と相談先

介護

導入:年間10万人が介護離職をしている現実

厚生労働省の統計によると、毎年およそ10万人が介護を理由に仕事を辞めているとされています。
数字だけを見ると「自分もいずれ辞めざるを得ないのでは」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。

しかし、現場で多くのご家族に接してきた私の経験からお伝えすると、介護離職は防げる場合が多いのです。
そのカギとなるのは「制度を知ること」と「周囲に相談すること」。この記事では、離職を避けるための具体策をわかりやすく解説します。

介護離職の主な原因 仕事との両立が困難 制度などの理解が不足

work stress

介護の時間と仕事の両立が難しい

介護は突発的な対応が多く、勤務時間との調整が難しいものです。
「急にデイサービスに行けなくなった」「通院に付き添わないといけない」といった予定変更が重なり、仕事を休まざるを得なくなります。

その結果「もう続けられない」と離職を選んでしまう方が少なくありません。

制度を知らずに諦めてしまう

本来なら介護休業や介護休暇、時短勤務制度などを利用できるケースでも、「制度の存在を知らなかった」という理由で辞めてしまう方がいます。
私自身、相談現場で「もっと早く知っていれば仕事を辞めずに済んだのに」という声を何度も耳にしました。

職場に言い出せない心理的な壁

「迷惑をかけるのではないか」「評価が下がるのでは」と思い、上司や人事に相談できないまま限界に達してしまう方もいます。
これはとても多いケースで、実際には相談すれば支援制度が使えるのに、孤立してしまうのです。

家庭内で介護を一人で抱え込む

兄弟姉妹がいても「自分がやるしかない」と思い込んでしまう方もいます。
結果的に心身の負担が増して、仕事を続けられなくなるのです。
介護は一人で抱え込むものではない、という認識が必要です。

離職せずに済む制度やサービス 介護休業 時短勤務 在宅勤務

remote work

介護休業の活用

家族の介護が必要になった場合、最長93日まで取得できる介護休業があります。
給付金も支給されるため、無収入になる心配は少なくなります。
退院後の準備期間や施設探しの際に有効です。

時短勤務制度で負担を軽減

介護のために勤務時間を短縮できる制度です。
「夕方にデイサービスへ迎えに行きたい」「朝は訪問介護の調整をしたい」などの事情に対応できます。
無理せず働き続ける選択肢となります。

在宅勤務の選択肢

コロナ禍以降、在宅勤務を導入する企業が増えました。
在宅勤務なら移動時間を減らし、介護と仕事を両立しやすくなります。
「週に数日は在宅にする」といった柔軟な働き方ができる場合もあります。

組み合わせて使うことが大切

介護休業・時短勤務・在宅勤務は組み合わせて使うことで効果を発揮します。
一つの制度に頼るのではなく、自分の状況に合った形を選ぶことが、離職防止につながります。

介護サービスを組み合わせる方法 デイサービス 訪問介護

day care service

デイサービスの利用

日中、家族を施設に預けて入浴や食事、機能訓練を受けられるのがデイサービスです。
仕事中も安心して任せられるため、働き続ける大きな助けになります。

訪問介護(ホームヘルプサービス)

訪問介護員が自宅に来て、食事や排泄、掃除などをサポートしてくれます。
特に夜勤や長時間労働がある方には心強いサービスです。

ショートステイで一時的に預ける

数日間、介護施設で家族を預かってもらえるショートステイも有効です。
出張や繁忙期に利用する方も多く、「仕事を優先せざるを得ない時の選択肢」として役立ちます。

サービスの組み合わせ例

例えば「平日はデイサービス+夕方は訪問介護」「出張のある週はショートステイ」といった形で組み合わせることで、負担を分散できます。
制度とサービスを併用することで離職を防ぐことが可能です。

職場で相談するための第一歩 介護相談窓口 上司への相談

workplace meeting

会社の介護相談窓口を利用する

大企業を中心に介護相談窓口を設けているケースが増えています。
人事担当者や専門スタッフが相談に応じてくれるので、まずは活用してみましょう。

上司への伝え方

「親が介護が必要になった」「通院付き添いがある」など、事実を簡潔に伝えることが大切です。
制度の利用を前提に話すことで、理解を得やすくなります。

誠意を持って話すこと

「迷惑をかけますが、制度を活用すれば両立できます」と伝えると、前向きに受け止めてもらえます。
私の経験上、この姿勢があると職場も協力的になります。

小さな一歩から始める

最初から大きな相談をする必要はありません。
「まず半日の休みを取りたい」といった小さな一歩から始めることで、相談しやすくなります。

家族や兄弟姉妹で介護を分担する工夫

family support

一人で抱え込まない

「自分が全部やらなければ」と思う必要はありません。
兄弟姉妹がいれば、できることを分担するだけで大きな支えになります。

役割を話し合う

「病院の付き添いは兄」「買い物は妹」「金銭管理は自分」など、具体的に役割を決めるとスムーズです。
曖昧にすると不満が出やすいので、話し合いの場を持つことが大切です。

遠方の家族も役割を担える

離れて暮らす家族も、電話連絡や費用の負担などで役割を担うことができます。
「できることをできる人がやる」姿勢が重要です。

介護分担の工夫が離職防止に直結する

家族で協力し合うことで、仕事を辞めずに介護を続けられる可能性が高まります。
介護離職を防ぐためには、家族の協力体制づくりも欠かせません。

まとめ:離職する前に「使える制度」を必ず確認してみましょう

年間10万人が介護を理由に離職していますが、その多くは制度やサービスを知らなかったことが原因です。
介護休業・時短勤務・在宅勤務・介護サービスなどを上手に組み合わせれば、仕事を辞めずに介護を続ける道は必ずあります。

まずは会社の就業規則と介護保険サービスを確認し、必要に応じて職場やケアマネ、地域包括支援センターに相談してみてください。
「辞めるしかない」と思い詰める前に、できることが必ずあります。